日本語通訳文は、順天堂大学大学院大学院医学研究科再生医学、同医学部形成外科学講座、順天堂医院足の疾患センター教授の田中里佳と同所属准教授である藤井美樹により監修された。
創部感染は創傷のある患者、その家族、医療専門家にとって引き続き課題となっている。創部感染は、創傷治癒の長期化、複数回の通院、入院期間の延長につながる可能性がある。創傷を持つ患者とその家族にとって高額な費用がかかり、生活の質に悪影響が生じることになる。創部感染の兆候と症状を正確に適時特定することは、創部感染を効果的に管理する上で重要である。 国際創部感染協会(International Wound Infection Institute、IWII)委員会の作成した『クリニカルプラクティスにおける創部感染』の本版は、2016年に発表された以前のコンセンサス文書の更新版である。創傷環境、感染のリスクファクター、バイオフィルム、抗菌剤耐性、創部感染の特定と管理に関する新技術の研究およびクリニカルプラクティスにおける進歩が、本更新版に取り込まれている。本書は、創部感染に関する科学と臨床応用の最新知識に基づき実用的な情報を提供することを目的としている。 一部の章を拡張して新しい章を追加し、創傷に関する最近の論議について説明し、IWIIによって実施された最新のコンセンサスプロセスで提起されたトピックに関する新たな定義を提供している。文書の更新に際して、厳格な方法論を実施した。文献のシステマティックレビュー、デルファイプロセス(定義の洗練化)、局所抗菌剤の臨床効果に関するエビデンスのクリティカルアプレイザル、世界中の主要な学際的オピニオンリーダーによる査読が含まれる。 本書に欠かせないのが、クリニカルプラクティスで医療専門家および教育者と研究者が使用するIWII創部感染コンティニュウム(IWII-WIC)の更新版である。この使用を促進するため、IWII-WICは取り外し可能なポスターとして提供される。IWII-WICの他のバージョンはIWIIのウェブサイトから入手できる(患者や学生指導向けの簡易版など)。